2.4GHz帯のチャネル配置
IEEE802.11b/g/nなどで使用する2.4GHz帯は、13のチャネルを利用できる。しかし隣接するチャネルと周波数が重なっているので、選択するチャネルによっては干渉が発生してしまう。複数の無線LANアクセスポイントを干渉させずに使うには、「1ch」「6ch」「11ch」といった離れたチャネルを使うのが定石。
![]() |
2.4GHz帯では干渉なしに使えるチャネルは3つしかない |
5GHz帯のチャネル配置
5GHz帯は使えるチャネルが多い。チャネルを変えればAP同士で干渉しないので、オフィスなど多くの端末が無線LANに接続する環境でも使いやすい。ただし干渉は皆無でない。気象レーダーなどの外的要因によって電波干渉が起きる場合がある。
![]() |
5GHz帯なら19個のチャネルを使える |
CSMA/CA
無線LANは、APを中継してステーション間で通信が行われる。このときAPはブリッジとして機能する。無線LANの伝送媒体は各ステーションで共有されているため、アクセス制御方式にCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance: 搬送波感知多重アクセス/衝突回避)方式を採用している。CSMA/CA方式には、ACK制御方式とRTS/CTS制御方式の二つの方式がある。
ACK制御方式
ACK制御方式は、次の手順に従って通信を行う。
1. 送信ステーションは、電波の有無を検知し、通信中のステーションがないことを確認する
2. 送信ステーションは、DIFSと呼ぶ時間待機し、さらに「コンテンションウィンドウ」又は
「バックオフウィンドウ」と呼ぶランダムな時間待つ
3. 送信ステーションは、データフレームを送信する。フレームのデュレーション領域には通信を予約する時間が格納される。この時間をNAV(Network Allocation Vector: ネットワーク割当てベクトル)という。ほかのステーションは、フレームを受信するとNAV値を更新し、その予約期間が満了するまで送信を行わない。この仕組みにより、送信完了まで衝突が回避される
4. 正常に通信できたら、APはACKフレームを送信ステーションに返信する。ACKフレームのNAV値には「0」がセットされる(ただしフラグメンテーションが発生しない場合)
5. 送信ステーションはACKフレームを受信する。一定期間内にACKフレームを受信できなかった場合、通信障害が発生したとみなしてフレームを再送する
RTS/CTS制御方式
RTS/CTS制御方式は、次の手順に従って通信を行う。
1. 送信ステーションは、電波の有無を検知し、通信中のステーションがないことを確認する
2. 送信ステーションは、DIFSと呼ぶ時間待機し、さらに「コンテンションウィンドウ」又は
「バックオフウィンドウ」と呼ぶランダムな時間待つ
3. 送信ステーションは、RTSフレームを送信し、APに対して送信権の獲得を要求する。フレームのデュレーション領域には、RTSフレーム用のNAV値が格納されている
4. APは当該ステーションに送信権を割り当てる。それを全てのステーションに通知するため、CTSフレームを送信する(全ての端末はAPとは通信できる)。フレームのデュレーション領域には、CTSフレーム用のNAV値が格納されている
5. 送信ステーションはCTSフレームを受信し、自分が送信権を獲得したことを確認する(ほかのステーションは、当該ステーションが送信権を獲得したことを知る)
6. 送信ステーションは、データフレームを送信する。
7. 正常に通信できたら、APはACKフレームを送信ステーションに返信する。
8. 送信ステーションはACKフレームを受信する
Ad-Hocモードとインフラストラクチャモード
無線LANのステーション同士を接続するモードには、次の二つがある。
モード | 内容 |
---|---|
Ad-Hocモード (アドホックモード) |
APを使用せずに、全ての無線LAN端末が1対1(Peer to Peer)で通信する方式 |
インフラストラクチャモード | APを使用する形式。1台のAPでカバーできるステーションの台数は20~30台といわれている。APが複数あれば端末を移動してもローミング機能により別のAPと通信が可能 |
BSS, ESS
無線LANのセグメントは大きく分けて二つある。
セグメント | 内容 |
---|---|
BSS (Basic Service Set) |
アドホックモードでは、通信し合うステーションで構成された無線LANのセグメント。IBSS(Independent BSS)とも呼ばれる。インフラストラクチャモードでは、1台のAPで構成された無線LANのセグメント |
ESS (Extended Service Set) |
1台のAPだけでは電波の到達距離に限界がある。そこで、AP同士を有線LANなどで接続し、より大規模な無線LANセグメントを構成する。これをESSという。AP同士を結んだネットワークをDS(Distribution System)という。なお、DSは一般に有線LANだが、AP同士を無線LANで通信し合うWireless DS(WDS)も構成可能 |
ローミング機能
無線LANステーションを移動した場合、最寄りのAPに自動的に接続して無線通信を継続する機能を「ローミング機能」という。ただし、AP及び無線LANステーションは、同一のESSに属している必要がある。なお、隣接するAPは、電波干渉を避けるために異なるチャネルを用いる。
無線LAN規格のフレームフォーマット
無線LANフレームは、「PLCPプリアンブル」「PLCPヘッダ」「PSDU」から構成される。PSDUはMACフレームであり、その中にIEEE802.11ヘッダとデータ、FCSが含まれている。
フレーム制御、デュレーションID
フレーム制御領域は、フレームのタイプ(管理用/制御用/データ用)、WEP暗号化の有無、ToDS、FromDSなどを設定する。
0のとき | 1のとき | |
---|---|---|
ToDS | 宛先が無線LAN端末 | 宛先がアクセスポイント |
FromDS | 送信元が無線LAN端末 | 送信元がアクセスポイント |
デュレーション/ID領域は、端末がデータを送信できるようになるまでの待機時間などを表す。
フレームアグリゲーション
宛先が同じ複数のフレームを連結して送信する技術。CSMA/CA方式のスループットの低下を軽減するために、IEEE802.11nから導入された。CSMA/CA方式におけるスループットの低下要因は、「確認応答」と「フレームの送信待ち時間」の二つ。フレームアグリゲーションを使用することで、1フレーム当たりの無線チャネル占有時間は長くなり、他の端末の送信待ち時間も長くなるが、全フレームの送信にかかる所要時間は短縮できる。
通信形態
無線LANの通信形態は4種類ある。それぞれの通信形態によって、アドレス領域に格納される値は異なる。
通信形態 | 通信形態 | フレーム制御 | アドレス | 適用 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
宛先 | 送信元 | ToDS | FromDS | 1 | 2 | 3 | 4 | ||
① | 無線 | 無線 | 0 | 0 | DA | SA | BSSID | なし | アドホックモード |
② | 無線 | 有線 | 0 | 1 | DA | BSSID | SA | なし | インフラストラクチャモード |
③ | 有線 | 無線 | 1 | 0 | BSSID | SA | DA | なし | |
④ | 無線 | 無線 | 1 | 1 | RA | TA | DA | SA | Wireless DS(WDS) |
DA | Destination Address | 宛先端末のMACアドレス |
SA | Source Address | 送信元端末のMACアドレス |
BSSID | Basic Service Set ID | アドホックモード:乱数から生成 |
インフラストラクチャモード:APのMACアドレス | ||
TA | Transmitter Address | 送信側APのMACアドレス |
RA | Receiver Address | 受信側APのMACアドレス |
BSSIDは48ビット。インフラストラクチャモードではAPのMACアドレスがBSSIDに採用される。一方、アドホックモードではAPを使用しないため、ユニークなBSSIDを生成する。I/G(Indivisual/Group)ビットが「0」、G/L(Global/Local)ビットが「1」にセットされ、残り46ビットを乱数が占める。ステーションのMACアドレスはI/Gビットが「0」、G/Lビットが「0」であり、マルチキャストアドレスはI/Gビットが「1」、G/Lビットが「0」なので、BSSIDはどのアドレスとも重複しない値になる
0 件のコメント:
コメントを投稿