MCSインデックス(IEEE802.11ac)
MCS Index | 変調方式 |
符号化率 | ボンディング幅(上)とストリーム数(下) | |||||||||||||||
20MHz | 40MHz | 80MHz | 160MHz | |||||||||||||||
1 | 2 | 4 | 8 | 1 | 2 | 4 | 8 | 1 | 2 | 4 | 8 | 1 | 2 | 4 | 8 | |||
0 | BPSK | 1/2 | 7.2 | 14.4 | 28.9 | 57.8 | 15 | 30 | 60 | 120 | 32.5 | 65 | 130 | 260 | 65 | 130 | 260 | 520 |
1 | QPSK | 1/2 | 14.4 | 28.9 | 57.8 | 115.6 | 30 | 60 | 120 | 240 | 65 | 130 | 260 | 520 | 130 | 260 | 520 | 1040 |
2 | QPSK | 3/4 | 21.7 | 43.3 | 86.7 | 173.3 | 45 | 90 | 180 | 360 | 97.5 | 195 | 390 | 780 | 195 | 390 | 780 | 1560 |
3 | 16QAM | 1/2 | 28.9 | 57.8 | 115.6 | 231.1 | 60 | 120 | 240 | 480 | 130 | 260 | 520 | 1040 | 260 | 520 | 1040 | 2080 |
4 | 16QAM | 3/4 | 43.3 | 86.7 | 173.3 | 346.7 | 90 | 180 | 360 | 720 | 195 | 390 | 780 | 1560 | 390 | 780 | 1560 | 3120 |
5 | 64QAM | 2/3 | 57.8 | 115.6 | 231.1 | 462.2 | 120 | 240 | 480 | 960 | 260 | 520 | 1040 | 2080 | 520 | 1040 | 2080 | 4160 |
6 | 64QAM | 3/4 | 65 | 130 | 260 | 520 | 135 | 270 | 540 | 1080 | 292.5 | 585 | 1170 | 2340 | 585 | 1170 | 2340 | 4680 |
7 | 64QAM | 5/6 | 72.2 | 144.4 | 288.9 | 577.8 | 150 | 300 | 600 | 1200 | 325 | 650 | 1300 | 2600 | 650 | 1300 | 2600 | 5200 |
8 | 256QAM | 3/4 | 86.7 | 173.3 | 346.7 | 693.3 | 180 | 360 | 720 | 1440 | 390 | 780 | 1560 | 3120 | 780 | 1560 | 3120 | 6240 |
9 | 256QAM | 5/6 | - | - | - | - | 200 | 400 | 800 | 1600 | 433.3 | 866.7 | 1733.3 | 3466.7 | 866.7 | 1733.3 | 3466.7 | 6933.3 |
IEEE802.11acで導入された新技術
主に物理層の新技術は伝送の高速化、MAC層の新技術は伝送の効率化を実現している。
対応レイヤー | 新技術 | |
---|---|---|
11acMAC層 無線チャネルに対するアクセスを制御する機能ブロック。 伝送効率改善を実現 |
フレーム集約 フレームを束ねてオーバーヘッドを減らし、転送効率を向上 |
MU-MIMO アクセスポイントから最大4台の端末への下り伝送について、空間多重伝送を実現 |
ブロックACK ACKを束ねて制御オーバーヘッドを減らし、転送効率を向上 |
||
11ac物理層 無線信号伝送を受け持つ機能ブロック。 伝送速度の高速化や高品質化を実現 |
伝送帯域幅の拡大 伝送用の周波数帯域を広げ、信号を運ぶサブキャリアの本数を増やす |
|
変調多値数の増加 1個の信号(シンボル)で送れるビット数を増やす |
||
空間多重数の増加 同時に伝送できるデータ数を増やす(SU-MIMO) |
伝送帯域幅の拡大
11n規格で定義するチャネルは40MHz幅まで。データに使うサブキャリアの本数は108本。
11ac規格では新たに、80MHz幅と160MHz幅のチャネルを定義。サブキャリアの本数はそれぞれ234本と468本。11nと比べて最大伝送速度は2.17倍、4.33倍へ拡大。
隣接チャネルとの干渉を避けるため「ガードバンド」にもサブキャリアを配置し、帯域幅の拡大以上の高速化を実現。
11ac規格では、周波数軸上で不連続な2つの80MHzチャネル「80+80MHzチャネル」を規定。これを束ねて160MHz幅チャネルとして利用する「不連続周波数送信モード」を定義した。80+80MHzチャネルと通常の160MHzチャネルの違いは、周波数チャネルの連続性のみ。(サブキャリアの本数が同数なので伝送速度も同じ。)
空間多重数の増加
複数の送信アンテナから独立した情報を同時に、同一周波数で伝送する技術が空間多重伝送。
11nでは4空間多重まで。11acでは5~8空間多重を新たに規定。
最大多重数で比較すると伝送速度は2倍。
変調多値数の増加
11nの最大既定はOFDM信号の1サブキャリアを割り当てる「64QAM」まで。
11acでは新たに「256QAM」まで使用可能。約1.3倍の伝送速度拡大。
256QAMは64QAMに比べて信号点間の物理的距離が短くなり、雑音や干渉に対する耐性が相対的に弱くなるため、伝送距離が短くなる。
802.11無線LANでは、無線フレームごとに変調多値数を変えれれるため、伝搬環境に応じた最適な変調多値数を選べる。
MU-MIMO
<SU-MIMOの伝送原理>
SU-MIMOは、複数のアンテナで同時に信号を送り、受信側のデジタル信号処理で元の信号に分離する技術。
無線フレームのヘッダー部にある既知のビット列(HT-LTF、VHT-LTF)から推定した伝達係数を基に、混信した信号を元の信号に分離する。
上図の場合、T1、T2から受信局のアンテナR1、R2までの4つの伝搬路の状態は、h11(T1→R1)、h12(T2→R1)、h21(T1→R2)、h22(T2→R2)という4つの係数で表すことができる。
この場合、アンテナR1、R2に届く信号r1、r2は以下となる。
r1=h11・s1+h12・s2
r2=h21・s1+h22・s2
4つの係数を推定できれば、連立方程式を解くことで送信信号s1、s2が求まる。
<MU-MIMOの伝送原理>
MU-MIMOは、受信側で干渉となる混信信号がうまくキャンセルされるように、送信側で信号の位相や振幅を調整してから送信する。
上図のように2つの送信アンテナから放射される信号が「信号レベルが同一」かつ「互いに逆位相」という状態で受信アンテナに到達するように送信側で信号の位相・振幅をうまく調整しておく。(AP側の送信信号事前処理のことを「送信ビームフォーミング」と呼ぶ。)
送信ビームフォーミングは、伝搬路状態に応じて送信信号の位相・振幅を調整し、特定の場所に対してピンポイントで受信感度を調整する技術。
チャネル状態を正確に測定するため、11ac規格ではCSIフィードバックを規定。
CSI(Channel State Information)フィードバックは、APから端末へと向かう伝送路の状態を調べる仕組み。
APはNDP(Null Data Packet)を端末に送信、NDPのビット列は端末側が既知のため、伝搬路状態を推定することができる。端末はその推定結果をAPに返す。
<MU-MIMOで端末を管理する仕組み>
MU-MIMOでは、グループID(GID)という識別情報を使い、受信対象かどうか、空間多重数はいくつか、といった情報を端末ごとに管理している。
APが各端末にフレームを伝送する際に、無線フレームのヘッダー部分にGIDを格納する。
フレームを受信した端末は、GIDを見て自身宛てかどうかを判断する。
フレーム集約
802.11規格から11a/b/g規格までは、イーサネットフレームのペイロード部分(最大1500オクテット)をそのまま格納。11n/ac規格では、1つの無線フレームに多数のイーサネットフレームを格納してデータ長を拡大し、ヘッダーやフレーム間ギャップのオーバーヘッドを減らして伝送効率を改善する仕様「フレーム集約(フレームアグリゲーション)」を導入。
上図のように1個のIPパケットは「MSDU」という単位に入れられ、さらに複数のMSDUを、無線区間上の再送単位となる「MPDU」というデータにまとめる。
MSDUを多く束ねればオーバーヘッドを減らせるが、誤り発生時の再送データ量は増える。
MPDUをさらに「A-MPDU」という単位に束ね、これに無線フレームヘッダーを付けたものが1個の無線LANフレームとなる。
11n/acのA-MPDUは、ACKを集約してオーバーヘッドを減らす「ブロックACK」の利用を前提としている。
下図のようにヘッダーやフレーム間ギャップ、ACKフレームの送信といったオーバーヘッドが削減され、伝送効率が大幅に向上する。
MU-MIMOもACKやフレーム間ギャップを減らし、伝送効率を向上させる効果がある。
802.11a/n/acの仕様とスループットの比較
必須仕様だけで比較すると802.11acは11nの約3倍程度だが、オプション仕様での最大値を見ると11acはケタ違いの速さとなる。
802.11a | 802.11n | 802.11ac | ||||
必須仕様 | オプション仕様 | 必須仕様 | オプション仕様 | 必須仕様 | オプション仕様 | |
伝送帯域幅 | 20MHz | (規定なし) | 20MHz | 40MHz | 20MHz, 40MHz, 80MHz | 160MHz, 80+80MHz |
空間多重数 | (規定なし) | 1 | 2,3,4 | 1 | 2,3,4,5,6,7,8 | |
変調方式 | BPSK, QPSK, 16QAM | 64QAM | BPSK, QPSK, 16QAM, 64QAM | (規定なし) | BPSK, QPSK, 16QAM, 64QAM | 256QAM |
誤り訂正符号化率(R) | 1/2 | 2/3, 3/4 | 1/2, 2/3, 3/4, 5/6 | (規定なし) | 1/2, 2/3, 3/4, 5/6 | (規定なし) |
ガードインターバル長 | 800ナノ秒 | (規定なし) | 800ナノ秒 | 400ナノ秒 | 800ナノ秒 | 400ナノ秒 |
A-MPDUの最大サイズ(オクテット) | (規定なし) | 8192 | 6万5535 | 8192 | 104万8575 | |
物理層での最大伝送速度 | 24Mビット/秒 | 54Mビット/秒 | 65Mビット/秒 | 600Mビット/秒 | 292.5Mビット/秒 | 6.933Gビット/秒 |
既存規格との共存技術
802.11規格では、各端末が「CSMA/CA」により自律分散的に動作しチャネルを使い分ける。「CSMA/CA」では送信権を得る端末がランダムに決まるため、フレームの受信を始めるまで、11a/n/acのどの規格なのか事前にわからない。
そこで、フレームの種類をヘッダーの先頭部分にある情報から判定している。
<11a/n/ac規格の無線フレームフォーマット>
先頭にある「L-STF」と「L-LTF」の2つのフィールドは、11a/n/acすべてに共通となるよう、11a規格のフォーマットで統一している。「L」は11a、「HT」は11n、「VHT」は11acを意味する。
<受信したフレームが11a/n/acのどれかを判定する手順>
最初の絞り込みでは、まずL-SIGフィールドを見る。11n/acでは「BPSK、R=1/2」に設定したダミー情報が使われているため、そうでない場合は11aと判断できる。ただし、11aでも「BPSK、R=1/2」を使っている可能性が残されている。そこで、続く2つのシンボル(1個分の信号)でBPSKと「Q-BPSK」という特殊な変調方式を組み合わせ、11a(BPSK、R=1/2)、11n、11acを識別できるようにしている。
<既存規格と同一チャネルで共存する仕組み>
11n/ac規格では、送信側で伝送帯域幅の決定を簡単に行えるよう、段階的なチャネル幅設定の仕組みを取り入れている。
まずAPと端末間で最大帯域幅を決めたうえで、通信時に必ず用いる20MHz幅の「プライマリーチャネル」を設定する。その後に「セカンダリーチャネル」を追加して帯域幅を拡大する。
11acでは、さらに80MHz幅向けの「セカンダリー40MHzチャネル」、160MHz幅向けの「セカンダリー80MHzチャネル」を規定している。
<11a/n/acの共存環境での動作例>
下図の例では、11ac対応アクセスポイントAに11ac対応端末Bと11a対応端末Cが接続し、11n対応アクセスポイントDに11n対応端末Eが接続している状況を想定している。
11ac対応機器はプライマリーチャネル(ここでは40ch)を占有されると、その間はフレームをやり取りできない。
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