【出典「ピープルウェア トム・デマルコ (著)」】
人材を活用する
失敗プロジェクトの圧倒的多数は、原因が単なる技術的問題として片づけられないものばかりだった。
実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。
マネージャーのほとんどは、本来は担当者が解決すべき技術的な難問を、自分で解くことに時間を割いている。
ソフトウェアは、多数のチームやプロジェクト、固く結束した作業グループで開発するので、ハイテクビジネスではなく人間関係ビジネスに携わっているといえる。
仕事の人間的な側面より、技術面に注意を多く払う理由は、重要だからではなく、単にやりやすいからだ。
チーズバーガー生産販売管理哲学は、ソフトウェアの開発には全くなじまない。知的労働者を効率的にマネジメントするには、これと逆をやらなければならない。
(エラー大歓迎)
知的労働者が時々ミスを犯すのは極めて自然で、仕事を真面目にやっている証拠である。
間違いを許さない雰囲気が社内にあると、担当者は守りに入り、失敗しそうなことには絶対に手を出さなくなる。部下が誤った判断をするのが心配で、開発手順をシステム化したり、厳格なメソドロジーを無理強いして、設計上の重大な決定をさせないと、部下はますます消極的になる。間違いを犯さないよう手段を講じたプロジェクトでは、平均的な技術レベルは、それなりに上がるかもしれないが、チームの空気は重く沈む。
これと正反対のアプローチは、間違いを恐れさせないことだ。時々、どんな問題で行き詰っているかを聞き、「特に問題なし」というのは決してよい答えではないことを十分納得させることである。そして、担当者が問題をぶちまけたら、「よくやった」と誉める。これも彼らの給料のうちだ。
(マネジメントは尻をけとばすこと?)
担当者の自発的なヤル気が認められず、マネージャーがヤル気を補給するという考えほど、担当者の士気をくじくものはない。
担当者を働かせるために仕事を押し付けなければならないことなどまずない。人は誰しも仕事に愛着を持っている。マネージャーは、むしろ働きすぎないように、時折、気を配らなければならない。
(人材を提供する店)
「ジョージ・スミスがくたばったので、新しいのを頼む。今度はあまり生意気でない方がいいな」担当者一人ひとりの個性は、製造業でのマネジメント手法を、そのまま採用するマネージャーにとって頭痛の種である。一方、本当に人を知るマネージャーは、ユニークな個性こそが、プロジェクト内の不思議な作用を活発にすることをよく認識している。
(プロジェクトと死後硬直)
安定生産を重視する製造現場の考え方は、プロジェクトでの仕事にはなじまない。生きているプロジェクトの全期間を通しての目的は、それを終わらせることにあることを忘れがちだ。
プロジェクトの静的な面でなく、動的側面に全神経を集中させることだ。
触媒が重要なのは、いつも不安定な状態にあるプロジェクトのまとめ役を果たすからである。プロジェクトメンバーを結束させる能力のある人は、普通の仕事をする人の二人分の価値がある。
昔からある二つの価値観。一つは、地球上には一定量の価値しかないので、いかに富を搾り取るか、というスペイン流の考え方。もう一方は、価値は、発明の才能と技術で創造するもの、というイギリス流の考え方。
スペイン流のマネージャーは、タダ働きの残業を利用して、生産性を上げようと夢みたいなことを考える。この連中にかかると、1週間といっても、実際には80時間、90時間働かせて仕上げた成果を、40時間で割り、1時間当たりの生産性とする。
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